感情のない熱っぽい目

認知症だったあーちゃんのお母さん、つまりなーにゃんとワフウフのおばあちゃんのことで、強く印象に残っているのは、「目」。
施設に入ってから、徘徊が酷かったおばあちゃんは歩けるのに車椅子に固定されて動けなくされて、認知症状はどんどん進んだ。
娘であるあーちゃんのことは分かっていたが、孫であるなーにゃんやワフウフのことはまもなく分からなくなり…
そのうち、会いに行ってもあまり反応が無くなった。
おばあちゃんと同じような無表情のお年寄りがホールには沢山座っていた。
沢山人がいたのに、広間は静かだった。
違う性別違う体系違う顔立ちなのに、魂の抜けたような「無」の表情になったお年寄りは驚くほど似ていて、おばあちゃんを見つけ出すのにはいつも少し時間がかかった。
おばあちゃんを囲んで座り、沢山話しかけるうちにおばあちゃんの表情が動き、少しずつおばあちゃんが戻ってくる。
だけど、施設を後にする時におばあちゃんを振り返ると、おばあちゃんはまた「無」に戻っている。
「無」の時のおばあちゃんは殆ど反応がないんだけど、時々黙ったままじーっとこちらを見つめてくる時があった。
反応がないから話しかけている言葉を理解しているのかしていないのかわからない。
だけど、無表情な顔のなかで熱っぽく潤んだ目でじーっと見つめられると、
半分はもう私のことは分からないのだからと諦める気持ち、そんな風になってしまったおばあちゃんに対する悲しみ、哀れみ、そんなぐちゃぐちゃな気持ちを見透かされているようで怖かった。
あーちゃんは色々なことができなくなり、分からなくなっているとはいえ、まだまだ娘たちや孫たちのことを分かっているし、繰り返しは酷くても会話のやり取りも出来る。
だから普段はあまり思わないのだけど…
ふとした瞬間にあーちゃんがおばあちゃんとよく似た「無」の表情をしている時がある。写真に写っているあーちゃんは特にそうだ。
「撮るよ!」って言ってるからあーちゃんは撮られることを意識して撮られているはずなのに。
そして、目が…
やっぱり以前とは違う、熱っぽく潤んだ目なのだ。
あの目を見ると、あーちゃんが確実におばあちゃんの状態に近づいていることが分かって怖くなる。
あーちゃんはいつまであーちゃんでいられるんだろう。

にほんブログ村 介護ブログ 認知症へ
にほんブログ村
Source: アルツハイマー